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機材全般
2026年05月09日
不織布やフィルム、合成繊維などのロール材を扱う製造現場では、「切断と同時にほつれを防ぎたい」「端面をきれいに仕上げたい」という課題が多く聞かれます。こうしたニーズに応える技術として、超音波溶着や超音波溶断が広く使われてきました。
ただし実際の現場では、原理や用途の理解だけでは十分でないケースも少なくありません。本コラムでは、超音波溶着・溶断の基本から、現場で起きやすい不良、他方式との違い、設備選定のポイントまでを整理して解説します。
| 項目 | スリッター
|
ロールスリッター
|
| スリッター刃数 | 複数枚 | 1枚 |
| 刃種類 | シェアカット(シャーカット) レザーカット(フェザーカット) スコアカット |
片刃 両刃 チップソー |
| スリット方式 | ロールtoロールでスリット | 紙管ごとスリット |
| スリット対象 | フィルム、シートなどの連続した素材 | ロール状の原反(紙管付き) |
| 熟練度 | 熟練技術が必要で属人的な機械になりやすい | タッチパネルで簡単設定、初心者や女性向き |
| 精度や品質 | 高精度 | 安定した精度 |
| 作業効率 | 高速で大量生産向き ※同じ材料を生産する場合に限る |
待ち時間なく効率的に、必要な分だけスリット可 |
| 安全性 | 操作者の技術による | 刃物は使用中以外カバー内で安全 |
| メンテナンス | 刃物交換や位置調整が高難易度 | 誰でも簡単に交換や調整可 |
| 対象ニーズ | 生産性重視、高精度重視 | 操作性や安定性重視 在庫削減や納期短縮に貢献 |
| 対象素材 | 小範囲 ※素材によって機種が変わる |
広範囲 ※1台で広範囲に対応可 |
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目次
超音波溶着は、20kHz以上の高周波振動と加圧を組み合わせ、熱可塑性樹脂を溶融・接合する技術です。振動エネルギーが素材の接合面に摩擦熱を発生させ、樹脂を瞬時に溶かして一体化させます。
溶着機の基本構成は、電気信号を高周波に変換する発振器、振動を生む振動子、振動を最適な振幅に変換するブースター、素材に振動を伝えるホーンの4要素で、溶着時間は通常1秒以下と短いのが特徴です。仕上がりを左右するのは、溶着時間・振幅・加圧力の3要素で、これが適切に組み合わされて初めて安定した接合強度が得られます。
「超音波溶着」が部品同士の接合を指すのに対し、「超音波溶断」は素材を切断しながら切断端面を同時に溶着する加工方法です。カット&シールとも呼ばれ、不織布やフィルムを切断すると同時に端面を固めることで、ほつれを防ぎ、シール性を確保します。マスクや生理用品などの不織布製品、食品包装フィルムのシール、合成繊維生地の端面処理など、「切るだけでなく、端面をきれいに仕上げたい」用途で広く使われています。
なお、「溶着しながら切断」を実現する方式は超音波だけではありません。熱を加えた丸刃で切断するヒートカットや、誘電加熱を使う高周波溶着も同じ目的を実現できます。この点は4章で詳しく比較します。
超音波溶着の主なメリットは、溶着時間が通常1秒以下で生産性が高いこと、接着剤やネジが不要でランニングコストを抑えられること、素材周辺への熱影響が小さく切断面がきれいに仕上がること、火を使わないため安全性が高いこと、消費電力が少なく省エネであることです。また、溶着条件のパラメータが数値で管理でき、プログラム保存により再現性を確保できる点も強みとされています。
特に、食品包装や医療機器などの衛生用品で「接着剤を使えない」「金属片を混入させたくない」という現場では、超音波溶着・溶断は有力な選択肢となります。
一方で、超音波溶着・溶断には無視できない課題もあります。
まず、ホーンのサイズに制約があるため、大きな部品や幅広のロール材には対応が難しい傾向があります。また、対応できる素材は熱可塑性樹脂に限られ、綿やウールなどの天然繊維、熱硬化性樹脂には使えません。厚手の素材では溶着エネルギーが不足することもあります。
さらに、現場で見落とされがちなのが「条件管理の難しさ」です。試作段階では問題なく溶着できていても、量産で速度を上げた瞬間に品質が崩れる、あるいは同じ条件で運転しているはずなのに仕上がりがブレる、といった事象は珍しくありません。原因は、温度・圧力・速度・振幅のわずかなズレです。超音波溶着・溶断は、一見シンプルに見えて、条件管理にノウハウが必要な技術だといえます。

超音波溶断が最もよく使われるのは、不織布・フィルム・合成繊維の「切断と同時に端面処理」を行う用途です。マスク、おむつ、生理用品、包装フィルムのシール、合成繊維生地の端面仕上げ(耳処理)など、「切断しっぱなしにすると品質が成立しない」製品群で活躍しています。
加工方式は、ロール材を連続送りしながら加工するロータリー式と、1点ずつ加工する固定式(スポット加工)に分かれます。生産量が多い場合はロータリー式、試作や小ロットの場合は固定式、といった使い分けが一般的です。
超音波溶着・溶断が対応できるのは「熱可塑性樹脂」の素材です。具体的には以下のような素材が対象となります。
| 分類 | 対応可否 | 代表的な素材 |
| 合成繊維・不織布 | ○ 対応可 | ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン系不織布 |
| 熱可塑性フィルム | ○ 対応可 | PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET |
| 天然繊維 | × 不可 | 綿、麻、ウール、シルク |
| 紙・パルプ系 | × 不可 | 上質紙、クラフト紙、ティッシュ原紙 |
| 熱硬化性樹脂 | × 不可 | エポキシ、ウレタン(硬化後) |
「自社の素材に使えるかどうか」は、この表でまず一次判断できます。ただし、同じ熱可塑性樹脂でも、グレードや添加剤、ガラス繊維などの強化材の有無によって溶着性は大きく変わるため、導入前のテスト加工は欠かせません。
素材別の具体事例や対応可否については、〖繊維業界〗スリット加工できる素材一覧と事例まとめ、〖不織布業界〗スリット加工できる素材一覧と事例まとめ、〖フィルム業界〗スリット加工できる素材一覧と事例まとめも参考になります。
「溶着しながら切る」は、見た目ほど簡単ではありません。現場では以下のような不良がよく発生します。
| 現象 | 主な原因 | 向く方式・対策 |
| 端面のほつれ(溶着不足) | 振幅・加圧力の不足、送り速度が速すぎる | ヒートカット(刃先温度で安定溶着) |
| 切断面の波打ち | 振動や送りの不均一、ワーク密着不足 | ヒートカット(連続送りで送り安定) |
| 溶けすぎて変形 | 加圧・時間・振幅のいずれかが過剰 | ヒートカット(温度制御で安定化) |
| 焦げ・黒ずみ | 溶着時間過多、エネルギー過多 | 超音波の条件再設定(振幅・時間を下げる) |
特にほつれ・波打ち・変形は、ロール材の連続加工でよく出る症状で、送り速度や刃先温度が安定するヒートカット方式が向いているケースが多くあります。一方、焦げや黒ずみは条件を見直すことで超音波方式でも改善が見込めます。方式を切り替えるか条件を調整するかは、現象の原因を切り分けて判断することが重要です。
現場で端面品質を判断するとき、ほつれの有無だけで評価するのは不十分です。実際には、端面から繊維や素材が飛び出していない「ほつれ」、切断面に不要な突起が出ていない「バリ」、焦げや変色などのない「見た目」、そして溶着部が製品要求の引張強度・シール性を満たす「強度・気密性」の4観点で総合的に評価する必要があります。
この4観点は、どれか1つが不合格でも、後工程やエンドユーザーのクレームにつながる可能性があります。設備選定の段階で「どの基準をどの水準で満たす必要があるか」を明確にしておくことが、仕様ズレを防ぐ第一歩です。
もう1つ見落とされがちなのが、「切断工程は後工程の出発点」という視点です。切断・溶断の品質が安定しないと、端面のほつれが異物混入の原因となりシール不良を招く、端面の波打ちや変形がラミネート工程で気泡やしわの原因になる、外観のばらつきが最終製品の見た目クレームに発展する、といった後工程トラブルにつながります。
「切ってしまえば終わり」ではなく、切断面の状態が下流工程のすべてに影響します。この前提を踏まえると、端面品質を安定させる方式・設備の選定が、製品全体の品質や歩留まりを大きく左右することがわかります。
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「溶着しながら切断」を実現する方式は、超音波溶断・ヒートカット・高周波溶着の3つが代表的です。それぞれの特徴を5つの観点で比較すると、以下のようになります。
| 比較軸 | 超音波溶断 | ヒートカット | 高周波溶着 |
| 対応素材の幅 | △ 熱可塑性樹脂に限定 | ○ 繊維系を中心に幅広い | △ 極性樹脂(PVC等)に限定 |
| 切断面品質(ほつれ防止) | ○ シール性は高い | ○ 連続加工で安定 | ○ 気密性が高い |
| 連続加工(ロールtoロール) | △ ホーン幅に制約 | ◎ 得意(幅広ロールも対応) | △ 電極サイズに制約 |
| 設備コスト | 中〜高 | 中 | 高 |
| 保守性 | ホーン摩耗の管理が必要 | 刃交換で対応(比較的容易) | 電極メンテナンスが必要 |
ロール材の連続加工を前提とする場合、ヒートカットの強みが際立ちます。一方、小型樹脂成形品の接合や限られた範囲の高精度シールなどでは超音波が有利です。PVCのような極性の強い素材には高周波溶着が向いています。
もう1つ、方式選定で重要なのが「連続加工」か「スポット加工」かという切り口です。連続加工(ロールtoロール)は、巻き出しから巻き取りまで素材を止めずに流しながら加工する方式で、大量生産に向きます。スポット加工は1点ずつ溶着する方式で、試作や小ロットに向きます。
超音波溶断にもロータリー式の連続加工機はありますが、ホーン幅の制約から幅広のロール材には対応しにくい傾向があります。一方、ヒートカットはロール材の連続加工を得意とし、幅広の素材を高速で送りながら溶着・切断できます。「自社の生産量や素材幅に対してどちらの加工形態が適しているか」を見極めることが、方式選定の第一歩です。
方式の特性を知らずに選定すると、導入後に困ることになります。よくある失敗としては、超音波を選んだが幅広のロール材に対応できず別設備の追加導入が必要になった、連続加工用途でヒートカットにすべきだったのに超音波を選びサイクルタイムが合わなかった、素材が天然繊維だったため超音波も高周波も使えず設備導入後に発覚した、といったケースが挙げられます。
こうした選定ミスを避けるには、加工対象の素材・形状・生産量を整理したうえで、複数方式の比較検討とテスト加工を行うことが不可欠です。自社だけで判断が難しい場合は、加工実績のあるメーカーに相談するのが確実です。
ヒートカット機は、加熱した丸刃で素材を溶着しながら切断する方式です。超音波と比べて、幅広のロール材(最大1600mm級)を連続送りで加工できること、刃先温度の調整により繊維・フィルム・シートなど幅広い素材に対応できること、条件調整が比較的シンプルで超音波ほどシビアなパラメータ管理を必要としないこと、送り速度が速く生産性を確保しやすいことが強みです。
たとえばキンダイのヒートカット機KT-602Aは、ヒートカット精度±0.1mm、最高刃先温度約350℃という仕様を備え、フリー回転する丸刃を採用することで調整が容易かつ走行速度も確保されています。タペストリー、カーテン、のぼり、リボン、メッシュなど繊維系素材のロール加工では、特に有効な選択肢です。
ヒートカット機の仕様や用途の詳細は、ヒートカット機とは?用途やスリッターとの違いを解説もあわせてご覧ください。

超音波溶着・溶断、ヒートカットなどの設備を選定する際は、以下の5つの観点を押さえておくと失敗を減らせます。
①加工対象の素材種類・厚み・幅(熱可塑性かどうか、幅広ロールへの対応が必要か)、②切断面に求める品質(ほつれ防止だけでなく、バリ・見た目・強度・気密性のどれを重視するか)、③生産量と加工速度(連続加工が必要かスポット加工で足りるか)、④メンテナンス性(超音波はホーン摩耗の管理、ヒートカットは刃交換と、方式ごとに必要な保守作業が異なる)、⑤設備コストとアフターサービス体制(初期費用だけでなく導入後のサポート体制まで含めて比較する)、の5つです。
特に⑤は軽視されがちですが、機械は10年20年稼働する資産です。キンダイは、設計開発から製造・販売・アフターサービスまでを自社で一貫して担う体制を強みとし、標準機から別注機まで柔軟に対応することで、顧客の課題に応じたご要望以上の提案を心がけています。納品後もこまめに対応してくれるメーカーを選ぶかどうかは、長期的な設備運用の成否を大きく左右します。
溶着・切断設備の現場では、ヒートカットの高温刃に触れて火傷を負う、刃交換時の不注意による指の切り傷、超音波機の振動や騒音による長時間作業での疲労蓄積といった安全リスクが実際に発生しています。こうしたリスクに対しては、国際規格ISO 12100に基づくリスクアセスメントの考え方に沿って、設備ごとの対策を講じることが重要です。代表的な対策としては、加工部を物理的に隔離する安全カバー、作業者の侵入を検知して機械を停止させるセーフティライトカーテン、運転中の扉開放を防ぐ電磁ロック付きインターロックなどが挙げられます。
キンダイでは、上場企業の大手メーカーとの直接取引が多く、こうした安全仕様への対応実績を豊富に持っています。導入企業の安全基準に合わせた仕様調整にも柔軟に対応しており、現場環境に合った安全設計を提案できる体制を整えています。
2章でも触れたとおり、超音波溶着・溶断は温度・振幅・圧力・速度のわずかな変動で仕上がりが変わる技術です。こうした微細な変化は作業者の目視では把握しきれず、不良が発生してから気づくケースも少なくありません。
この課題に応えるのが、IoT技術による条件ロギングと稼働支援です。加工条件(温度・振幅・加圧力・送り速度など)を連続的に記録すれば、不良発生時の原因追及が容易になり、品質のトレーサビリティも確保できます。停止時のトラブル前後を自動記録しておけば、原因特定と復旧時間の短縮にも直結します。
キンダイでも、暗号化された通信で世界中から遠隔診断が可能なIoTリモートメンテナンスや、停止信号をトリガーにトラブル前後を自動録画するチョコ停ウォッチャーを提供しており、条件管理が重要な工程での品質安定と復旧スピードの両立に活用できます。
稼働支援の詳細は、IoTでリモートメンテナンス、トラブル前後のカメラ自動録画機能をご参照ください。
設備導入までの標準的な流れは、以下の4ステップです。
| ステップ | 内容 | ポイント |
| ① 課題ヒアリング | 加工対象の素材、生産量、品質要件、既存設備の課題を整理 | 抽象的な要望ではなく、具体的な素材名・寸法・数量を共有するのが成功の鍵 |
| ② 方式提案・仕様検討 | 超音波・ヒートカット・高周波など複数方式で比較検討 | 単一方式のみの提案ではなく、複数方式から最適解を選べる体制が望ましい |
| ③ テスト加工・評価 | 実際の素材で加工テストを行い、端面品質を確認 | ショールームで実機確認できると導入後のギャップを防げる |
| ④ 納品・導入後サポート | 据付、立ち上げ、操作教育、定期メンテナンス | 納品後のサポート体制が長期運用を左右する |
キンダイでは、自社ショールームで実際の素材を用いたテスト加工に対応しており、導入前に加工品質を確認できる体制を整えています。1945年創業以来、設計開発から製造・販売・アフターサービスまでを一貫して自社で担うため、方式提案からテスト加工、納品後のフォローまで窓口が分かれず、課題解決までのスピードが早い点が強みです。

超音波溶着・超音波溶断は、熱可塑性樹脂を瞬時に接合できる優れた技術であり、不織布やフィルムのカット&シール用途で広く活用されています。一方で対応素材や幅サイズに制約があり、条件管理もシビアなため、現場では量産移行時や連続運転時に品質が安定しない悩みが生じることもあります。
こうした制約に当てはまる場合は、ヒートカットや高周波など他方式も含めて検討する価値があります。特にロール材の連続加工や幅広素材、繊維系素材を扱う用途では、フリー回転丸刃による調整の容易さと走行速度を両立できるヒートカットが有力な選択肢です。
設備は一度導入すれば10年20年と稼働する資産です。だからこそ、初期の方式選定だけでなく、納品後にこまめに対応してくれるメーカーかどうかが、長期的な設備運用の満足度を左右します。自社の素材・生産量・品質要件を整理し、複数方式の比較とテスト加工を経たうえで、アフターサービスまで含めて信頼できるパートナーを選ぶことが、最適な「溶着しながら切断」への近道です。
「溶着しながら切断」の方式選定、自社素材での加工可否、テスト加工のご依頼など、お気軽にお問い合わせください。キンダイでは、1945年創業以来培ってきた設計・製造ノウハウを背景に、標準機から別注機まで幅広くご相談を承っています。
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創業1945年産業機械開発メーカーである株式会社キンダイにて、スリッターやヒートカット機など多様な自社製品開発に従事。
40製品以上の特許・実用新案を取得してきた技術基盤を持つ同社において、2017年より海外展開を本格化し、ベトナムやタイをはじめとする東南アジア諸国へ展開。
現在はIoTやAIを用いて現場に蓄積されたアナログ情報を可視化し、判断や操作を支援することで、新人でも簡単に扱えるモノづくりを進め、新規事業開発にも貢献している。
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